作品について
初めてのポストをします。今回の公演でドラマトゥルクを担当しております朝比奈です。
「かげろうー通訳演劇のための試論ー」
本番までいよいよ2週間を切りました。
まだ、つくり途中ですし、 演出の濱中とは違う見方をしていることもあるかもしれないのですが、 僕が考えていることなど少し書こうと思います。 作品の概要としては、 福島県いわき市の久之浜という被災した地域に住む方のインタビュー音声を、 俳優がヘッドフォンで聞きつつ、それを翻訳するというものです。 1、テーマとしての継承 演出の濱中によれば、今回の作品は継承の問題を扱っているそうです。 東日本大震災での被災の記憶の風化を防ぐ、という意味もあるでしょうし、 東日本大震災に限らず、ある悲劇(と言って良いのでしょうか)を、 記録として残す、アーカイブする方法は整理されているけれど、 その記録を再生する、記憶を受け継ぐ、ということはまだ考えれていないのじゃないか、 という問題意識があるみたいです。 2、濱中に巻き込まれるメンバー 今回の公演のメンバーは、僕を含めほとんどが、 元々、久之浜という地域で活動をしていた濱中に誘われたことから関わり始めています。 僕は、もともと気になってはいたのですが、 今回の公演に関わらなければ、福島の被災や復興に関して知ることもなかった、 例えば、開沼博さんの本を読んだり、実際に福島に行くこともなかった、 と思います。 そういうきっかけをもらえた、という意味で、 巻き込まれて良かったと思っています。 (それだけじゃなく、作品を通して、もっと巻き込まなきゃなのですが) 3、舞台芸術という形式と継承 濱中が、舞台芸術で継承というテーマを扱うことの意味を話しています。 舞台芸術ですと、上演のたびに生身の人が関わらなきゃいけないのが良い、と。 映像や音楽であれば、一度作った作品はDVDやCD等を再生するだけで、再生できる。 でも、舞台芸術の場合、例えば、演劇の過去の戯曲をアーカイブとみなして、その再生には今、生きている演出家や俳優が必要になる。 ただ、道具を使って再生するのではなく、生身の人間を通してでしか再生出来ないことが 継承というテーマに関わるのではないか、と思います。 4、俳優の向き合い方 今回、俳優はインタビューの音声をヘッドフォンで聞きつつ、それを翻訳しています。 以下、まだ作品のつくり途中ですし、濱中は違うことを考えているかもしれないですが。 普通、演技というと、「なにかになろうとする」「なにかを見せようとする」「なにかを再現しようとする」面があると思います。 今回の作品も、そういう面はあるのですが、 基本的には、俳優はインタビューの音声をヘッドフォンで聞いて、それを翻訳するだけで、「なにかを見せよう」とはしていないです。 ですが、俳優が実際にインタビューの音声を聞いて、意図せずとも影響されてしまう、考えてしまう姿が見えるのかと。 考えている姿を見せる、というのは、 普通の芸術作品だと「考えた結果、こう思う、こう見えた」というのを作るので、 やや練り切れてないのではないか、とも思うのですが、 継承というテーマには合っているのではないか、 とも思います。 5、稽古場でのゆったりした時間 今、稽古場では、ゆっくりと時間をかけて作品を作っています。 このことは、今回の作品に関してはとても良いことではないか、と思っています。 被災地に行って、少し話を聞いただけなのですが、 復興を早く進みようとし過ぎて起きるトラブルというのもある気がしました。 感情や身体がついていかない、議論がしきれていないのに進めていることもあるのではないか、と。 (もちろん、早く対応されるべき問題もあるとは思いますが) あるいは、 少しだけ考えて、すぐに結論を出して(出せないで)、忘れてしまう、 のではなく、考え続けることが大事ではないか。 また、 普段、忙しい中では考えないことを、 じっくり考える時間のが大事ではないか、と。 いろいろとヌルいかもしれないですが、 こんなことを考えています。
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